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内省と対話による組織の変容。熊平美香氏と考える組織の未来を変え得る力【イベントレポート】

2024年10月9日(水)に開催された経営者・人事担当向けイベント「幸せな組織とリフレクション・ダイアローグ」の様子をお届けします。

イベントのフル動画を公開しています。動画で見たい方はこちらから↓


この講座は『 “幸せ”と“成果”を両立する組織づくり』をテーマに、重要なノウハウをお持ちのゲストお招きし、未来を切り開くための7つの羅針盤を探求する連続講座の第5回目です。

今回のイベントでは、

・内省の技術を高め、自分の人生に自信を持ちたい
・固定概念に気づき、過去の成功体験を手放したい
・組織に内省と対話の技術をインストールしたい

このようなお悩みを持つ方は、ぜひ最後までご覧ください。

第7回イベントへのお申込みはこちら

https://teaminsight.gc-story.com/seminar/37

目次[非表示]

  1. 1.登壇者紹介
  2. 2.「リフレクションと対話」が未来を変え得る力を持つ
  3. 3.リフレクションと対話によっていかに認識は変容するか?
  4. 4.価値観や固定観念を手放し、新しいリーダーへ


登壇者紹介

熊平美香
昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジ 学院長
一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事


青山学院大学部法学部を卒業。家業の企業で勤務したのち、ハーバードビジネススクールでMBAを取得。会社に戻り、取締役経営企画室長などを務める。

その後、日本マクドナルド創業者の藤田田氏の元で新規事業や人材育成事業に携わり、独立。昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジ学院長、クマヒラセキュリティ財団代表理事、Learning for All 理事、未来教育会議代表、21世紀学び研究所代表理事など。


萩原典子
GCストーリー株式会社 CHO

ココシフの運営会社GCストーリーを2005年に実弟と立ち上げ、創業当初から組織のパフォーマンスの最大化と同時に全従業員の幸福にこだわった組織作りを行ってきた。2015年ころからは働きがいのあるランキングやホワイト企業大賞など数々の賞を受賞。
2020年からはココシフブランドを立ち上げ、メンタルトレーナーやコーチとして幸福度や自律度の高い組織作りのサポートを行っている。


「リフレクションと対話」が未来を変え得る力を持つ

リフレクションと対話をテーマとした今回の講演では、熊平氏がこれらの概念の定着を目指して取り組んでいる活動について語られました。熊平氏は「リフレクションと対話」における著書の執筆や教育活動を幅広く展開しています。



リフレクションとは、自己を客観的・批判的に振り返る行為を指します。反省がネガティブな感情を伴いがちであるのに対し、リフレクションは過去の経験を活かして未来を創造する力として機能すると解説されました。自己の経験を教訓として活用しながら、時には過去の経験による制限から解放されることで、新たな可能性が開かれていきます。

講演では、リフレクションが単なる振り返りの手法ではなく、前例のない時代において正解を見出すための効果的な方法であることが強調されました。特に、個人と組織の両面における成長と発展において、その重要性は今後さらに高まっていくことが示唆されています。

リフレクションへの理解を深めるには、メンタルモデルについても知る必要があります。
メンタルモデルとは、個人が持つ世界観や前提のことを指し、経験を通して形成されます。人は様々な経験から事実を選択し、それに意味付けを行い、判断の尺度を形成しています。この判断の尺度は、世界を見るレンズとなり、個人の認識や行動に大きな影響を与えるのです。




認知の「4点セット」についても解説がされました。「意見、経験、感情、価値観」の関係は、メンタルモデルを理解する重要な要素となります。意見の背景には必ず経験があり、その経験に伴う感情と価値観が存在します。例えば、犬に対する態度は個人の経験によって大きく異なります。犬と良い経験や思い出がある人は安心や喜びの感情と結びつき、犬を癒しの存在として捉えます。一方、怖い経験をした人は危険な存在として認識する。このように、メンタルモデルは次の行動判断に直接的な影響を与えるのです。

人の意思決定の9割以上が無意識に行われているとされる中、リフレクションにおいて自己の考えを批判的に見つめ直すためには、この4点セットが重要な役割を果たします。

対話においても、4点セットは重要な役割を果たします。効果的な対話には、自己内省と評価判断の保留、そして他者への共感が不可欠となります。対話の5つの基礎力として、以下が挙げられました。

  1. メタ認知:自己の考えの源泉を理解する
  2. 評価判断の保留:中立的な立場での対話
  3. 理解:相手の考えとその背景の把握
  4. 学習:新たな視点の受容
  5. リアルタイムアクション:対話中の自己モニタリング



特に多様性が求められる現代において、単なる意見の共有ではなく、価値観レベルでのコミュニケーションが重要です。対話は、互いの意見を理解し合い、新たな気づきを得る場となります。このような対話を実現するためには、参加者全員が対話の基礎力を理解し、実践することが求められるのです。


リフレクションと対話によっていかに認識は変容するか?



リフレクションとは、自己の内面や経験を振り返り、そこから学びを得るプロセスです。このプロセスを通じて、曖昧な感情や考えの解像度を上げ、より深い理解と学びへと変換することができます。組織において、このプロセスを日常的に取り入れることで、個人と組織の両方の成長を促進することが可能となります。
また、リフレクションは、ビジョンの形成や共有において非常に効果的なツールとなります。自身の経験や思いを含めた語りを通じて、より深い共感を得ることが可能と示唆されました。このように、リフレクションは個人の成長だけでなく、組織の発展においても重要な役割を果たします。感情の理解、ビジョンの共有、目標達成、人材育成など、様々な場面での活用が可能です。組織内で日常的にリフレクションを実践することで、より効果的な組織運営と持続的な成長が実現出来る可能性があります。
リフレクションの実践例として、昇格に関する具体的な事例が取り上げられていました。昇格のタイミングが近づいているにもかかわらず、打診された当事者が昇格を望まないというケースがあります。この場合、リフレクションを通じて、その背景にある思いや懸念を丁寧に探っていく必要があります。

まず、昇格に対する否定的な感情の背景には、周囲のマネージャーの働き方を見て「大変そうだ」という印象を持っていることが多くあります。しかし、この表面的な理由だけでなく、より深い部分まで掘り下げていくことが重要です。例えば「自分には無理な気がする」という自信の欠如や、より具体的な不安が隠れていることがあります。

このようなリフレクションは、一人で行うよりも対話を通じて行うことで、より深い気づきが得られます。ジャーナリングなどで一人で振り返ることにも意味はありますが、他者との対話によって新たな視点が開かれることが多いのです。

特に上司との対話の質が重要です。単に「大変そうですね」と共感するだけでなく、「具体的に何が大変そうに見えるのか」といった質問を投げかけることで、会話を深めていくことができます。例えば、「既存の働き方を前提にする必要があるのか」「もっと違う働き方ができるのではないか」といった、より本質的な議論に発展することもあります。

また、上司側の伝え方も重要です。単に「できるよ」と励ますのではなく、具体的にどのような部分を評価しているのか、どのような場面で貢献が見られたのか、そして今後どのような役割を期待しているのかを丁寧に伝えることが必要です。
このように、対話やリフレクションの過程では、当事者の不安や懸念に共感しつつ、より深い対話を通じて新たな視点や可能性を見出していくことが大切です。そして、それは単なる問題解決だけでなく、組織の在り方や働き方そのものを見直すきっかけにもなり得るのです。

価値観や固定観念を手放し、新しいリーダーへ

組織において、個々が異なる固定観念や価値観を持っていることを認識することが重要です。
リフレクションを通じて、組織全体をより良い方向へ導くためには、全員が意識的に取り組む必要があるのかもしれません。

しかし、現実には、リフレクションを必要とする人々や固定観念を手放すべき人々が、その必要性に気づかないことも多いようです。この課題に対する効果的なアプローチにおいても、まずは相手への共感から始まります。相手の世界観を理解し、4点セットを用いて伝えることで、相手の立場に立つことができるのです。

重要なのは、自分の正しさを押し付けるのではなく、相手の世界に一度入り込み、同じ視点に立つことだとイベントでは語られていました。そこから徐々に新しい方向性を共に探っていく姿勢が必要となります。「あなたが間違っていて、私が正しい」という態度では、相手の心のシャッターが閉じてしまうのです。



組織変革において、リフレクションの重要性が注目されています。特に、従来の成功体験が通用しなくなった状況や、急激な環境変化に直面した際には、外部に解決策を求めるだけでなく、自己への深い振り返りが不可欠となってきているのかもしれません。

現代のビジネス環境において、リーダーたちは新たな課題に直面しています。特に経営層では、これまでの「正解を持っている人」という既存の概念から脱却し、自己変革を迫られているのではないでしょうか。しかし、多くの経営者が「組織を良くしたい」という願望を持ちながらも、実際の変革に踏み出せないという現状があります。その背景には、自身の無力感や、変革への不安、そして長年培ってきた成功体験への執着が存在します。

注目すべきは、経営者の姿勢が組織全体に大きな影響を与える点です。実際、現場の社員たちは経営者の持つ力を認識している一方で、経営者自身がその影響力を過小評価している事例が多く見られるようです。この認識のギャップを埋めるためには、組織全体での対話とリフレクションが不可欠となるのです。

近年の組織変革には、社会的な価値観の変化も大きく影響しています。SDGsや環境問題への意識の高まり、そしてウェルビーイングの認識が広まり、単なる経済成長だけでなく、持続可能性や個人の幸福度も重要な指標となってきています。

組織の持続的な成長には、リーダーから一般社員まで、全員がリフレクションへの理解を深め対話を通して、組織の改善につなげていく必要があります。特に現代においては、従来の成功体験にとらわれることなく、新しい価値観や働き方に柔軟に適応していくことが求められているのではないでしょうか。失敗を恐れず、学びの機会として捉え、次のアクションに結びつけていく。そうした姿勢が、真の意味での「幸せな組織づくり」につながっていくのかもしれません。


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https://teaminsight.gc-story.com/seminar/37


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