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優秀な若手が「静かに」辞めていく本当の理由

企業内で、期待されていた優秀な若手社員が大きなトラブルも起こさず「静かに」会社を去っていくケースが増えています。目立った不満を口にするわけでもなく、周囲と揉めることもない。むしろ、最後まできちんと成果を出し、笑顔で退職していくため、会社側は「なぜ彼・彼女が?」と戸惑いだけが残ることも少なくありません。しかし、この静かな退職の裏側には、若手社員特有の価値観や、企業側の見落とし、組織課題が複雑に絡み合っています。優秀な若手の離職は、一人を失うだけではなく、周囲のモチベーション低下や「ここは長く働く場所ではないのかもしれない」という空気を生み出し、組織全体の生産性や採用力にも影響を与えます。だからこそ、若手社員がなぜ会社を離れていくのか、その本当の理由を深く理解し、早い段階から手を打つことが重要です。

<目次>

目次[非表示]

  1. 1.キャリア停滞感とこのままでいいのかという不安
  2. 2.
  3. 3.職場文化・人間関係が若手の心を離していく
  4. 4.形式的な1on1が生み出す分かってもらえない感
  5. 5.若手が求めている本当のリーダー像
  6. 6.まとめ

キャリア停滞感とこのままでいいのかという不安

若手社員の退職理由は、「給与が不満」「上司と合わない」といった表面的なものだけでは語り尽くせません。その背景には、自分のキャリアがこの会社でどこに向かうのかが見えない不安や、「ここにいても成長できないのではないか」という焦りがあります。入社前の採用面接や説明会では、魅力的なキャリアパスや成長機会が強調されていたにもかかわらず、いざ働き始めてみると、実態はルーティン業務ばかりで裁量も小さく、「このまま数年経っても、市場価値が上がらないのではないか」と感じた瞬間に、転職という選択肢が現実味を帯びてきます。特に、情報収集力が高く、他社の状況や同世代のキャリア事例をSNSやネットを通じて容易に知れる今の若手にとって、「現状維持」はむしろリスクとして映ります。

職場文化・人間関係が若手の心を離していく

また、職場文化や人間関係の影響も見逃せません。過度な競争を煽る雰囲気や、不透明で納得感に欠ける評価制度、「とりあえず言われたことだけやっていればいい」という空気は、主体的に働きたい優秀な若手ほどストレスになります。上司との価値観のズレも大きな要因です。たとえば、人生全体のバランスや健康を重視する若手に対して、「若いうちは多少無理をしてでも働くべきだ」という昭和型のマネジメントを押し付けてしまうと、「この人の下では自分らしく働けない」と感じ、静かに離れていきます。仕事外の時間も含めたライフスタイルを大切にするZ世代・ミレニアル世代にとって、ワークライフバランスを確保できる環境は重要な判断材料であり、その意識を企業側が軽視すればするほど、魅力的な他社へと気持ちは傾きます。

形式的な1on1が生み出す分かってもらえない感

企業側がこの「静かな退職」の兆候を見逃してしまう背景には、管理職や人事の認識不足があります。多くの会社では、年数回の評価面談や1on1を実施しているものの、形式的な確認に終始し、若手社員の本音に踏み込めていないことが少なくありません。「何か困っていることはない?」と聞かれても、若手側からすると「ここで本音を言っていいのだろうか」「評価に響くのではないか」という不安があり、結局は当たり障りのない会話で終わってしまいます。その結果、表面上は問題なく見えるまま、内心では転職サイトへの登録やエージェントとの面談が進んでいる、というギャップが生まれます。

さらに、中長期的な人材育成の視点が弱い企業では、若手社員が将来像を描きにくくなります。「この部署で3年働いたら、次はこういうポジションを目指せる」「このスキルを身につければ、役割が広がる」といった具体的なキャリアの道筋が見えないと、若手は自分の未来を会社に預けることができません。研修や教育の機会も、単発の集合研修を実施して終わりではなく、日々の業務と結びついた形でスキルアップを実感できる仕組みが求められます。それがない場合、「この会社で成長し続けるイメージが持てない」という理由での離職は時間の問題となります。

若手が求めている本当のリーダー像

もう一つ、見落とされがちなポイントが給与や待遇です。もちろん若手社員にとって、働きがいは重要ですが、それだけで生活が成り立つわけではありません。市場全体の給与水準が上がっていたり、同業他社が積極的な報酬見直しを行っていたりする中で、自社だけが昔の水準に据え置きのままであれば、優秀な人材から順に外へ流出していくのは当然の流れです。転職サイトやSNSで他社の年収レンジや福利厚生の情報を簡単に得られる今、「自分の市場価値と比べて、この会社からの評価は妥当か」という視点は、若手にとって非常にリアルです。

待遇面で言えば、単に給与額だけでなく、働きやすさを支える制度や環境も重要です。フレックスタイム制やリモートワークの活用、副業容認、育児・介護との両立支援など、働き方の選択肢があるかどうかは、若手社員の満足度を左右する大きな要素となっています。古い設備や非効率な業務プロセスに日々悩まされているのに、改善の動きが見えない職場では、未来志向の若手ほどストレスを感じやすくなります。逆に、デジタルツールの導入やオフィス環境の整備に投資している企業は、「ここなら長く働けそうだ」という安心感を若手に与えやすくなります。

優秀な若手が会社を去る理由として、リーダーシップの課題も無視できません。若手社員が求めているのは、指示命令型の上司ではなく、対話を通じて考えを引き出し、成長を支援してくれるリーダーです。にもかかわらず、現場では「背中を見て学べ」「言われたとおりにやればいい」というスタイルが根強く残っていることがあります。これでは、主体的に動きたい若手の意欲は徐々に削られていきます。

また、若手一人ひとりの目標やキャリア志向をきちんと理解しないまま、「みんな一律」の管理をしてしまうと、「自分のことを見てくれていない」「期待されていないのでは」と感じさせてしまいます。本来であれば、上司が定期的に対話の機会を設け、小さな成長や成果を具体的にフィードバックしながら、「あなたにはこういう強みがある」「次はこういう役割に挑戦してみよう」と背中を押すことが理想です。そのようなリーダーシップが欠如している職場では、若手社員は「この上司のもとで成長するイメージが持てない」と判断し、静かに転職を決めてしまうのです。

では、企業はどうすれば優秀な若手が「静かに」辞めていく状況を食い止められるのでしょうか。鍵となるのは、長期的なキャリアビジョンの提供と、それを支える具体的な仕組みづくりです。たとえば、定期的なキャリア面談を通じて、若手社員が5年後・10年後にどうなりたいのか、どんなスキルを身につけたいのかを一緒に言語化し、その実現に向けたステップを可視化していくことが大切です。「この資格を取ればこういう業務が任される」「このプロジェクト経験を積めば、将来的にマネジメントに挑戦できる」といった具体的なロードマップが提示されれば、若手社員は自分の努力がどこにつながるのかを理解でき、会社に残る理由が明確になります。

まとめ

最終的に、若手社員の「静かな退職」を防ぐために必要なのは、彼らの声に真摯に耳を傾け、組織として変わっていこうとする姿勢です。アンケートや1on1、ミーティングなど、表面的な仕組みを整えるだけでは不十分であり、「本音を言っても大丈夫」「この会社はフィードバックを歓迎してくれる」という心理的安全性をつくることが不可欠です。長期的なキャリアビジョンの提示、納得感のある評価と待遇、現代的な働き方を支える制度、そして若手の成長を応援するリーダーシップ。この4つが揃ったとき、優秀な若手社員は「ここでなら、自分のキャリアを安心して築ける」と感じ、静かに辞めていくのではなく、静かに根付き、周囲を巻き込みながら組織を前に進める存在へと育っていきます。

今、自社の若手がどんな思いで働いているのか。本当は何に悩み、何に期待しているのか。一度立ち止まり、対話を重ねながら組織を見直すことが、優秀な若手の離職を防ぎ、これからの時代に選ばれ続ける企業になるための第一歩と言えるでしょう。

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