
なぜ幹部が“他人事”になるのか ─ 経営と現場をつなぐ組織づくり
経営と現場の連携がうまくいかず、組織に不協和音が生まれる原因として、「幹部が現場のことを他人事のように捉えている」という現象が多くの企業で見受けられます。このような状態では、現場の声が経営に届かず、また経営の意図も現場に浸透しないため、全社一丸となった組織運営が難しくなります。この記事では、幹部が“他人事”になってしまう原因を掘り下げるとともに、その状況を打開し、経営と現場の一体感を生み出すための具体的な方法について解説します。
<目次>
幹部が他人事になる原因とは何か
幹部が現場に対して当事者意識を持たず、まるで別の世界の話のように受け止めてしまう背景には、さまざまな要因が絡んでいます。まず挙げられるのが「情報の断絶」です。現場で起きているトラブルや課題が正確に幹部に共有されず、表面的な数字や報告書だけで判断されることが多いため、幹部は実態に触れる機会を失い、自ずと距離が生まれます。
例えば、現場で新しい業務システムの導入に支障が出ていても、それが十分に報告されなければ、幹部は「うまくいっている」と誤認してしまいます。また、現場の社員も「どうせ言っても無駄」と感じて声を上げなくなり、負のスパイラルに陥ることもあります。
さらに、経営層と現場の「意識のギャップ」も大きな原因です。経営層は中長期の戦略や財務的視点に目を向けがちですが、現場は日々の業務や顧客対応に追われています。この視点のズレが積み重なると、経営層の判断が現場にとって的外れに映り、それがまた幹部の“他人事化”を加速させます。
組織文化が生み出す壁
組織内の文化や風土も、幹部が現場から乖離する要因の一つです。例えば、トップダウン型の組織では、部下が上司に忖度してしまい、本音を言いづらい空気が漂います。このような文化では、現場の課題が上層部に正しく伝わることは難しく、幹部も「現場はうまく回っている」と誤解しがちです。
一方で、風通しの良いオープンな文化を持つ企業では、上下の壁が薄く、現場からのフィードバックが幹部にも自然に届くため、“他人事”という感覚が生まれにくくなります。幹部が積極的に現場に出向き、社員とフラットに対話する文化が根づいていれば、現場の声を肌感覚で理解することができるのです。
経営と現場をつなぐためのアプローチ
幹部が現場の実情を理解し、当事者意識を持つようになるためには、意識だけでなく行動も変える必要があります。最も効果的なのは、「定期的な現場訪問」を制度として組み込むことです。ただの視察ではなく、現場の社員と対話を重ね、本音を引き出すことが重要です。短時間の表面的なコミュニケーションではなく、継続的に関わる姿勢が求められます。
また、「フィードバックの仕組み」を整備することも有効です。例えば、現場の声を吸い上げるための匿名アンケートや、意見を自由に投稿できる社内SNS、月1回の対話セッションなどを設けると、社員が気軽に声を上げやすくなります。こうした仕組みを活用して幹部が現場の意見に耳を傾けることにより、実態に即した経営判断が可能になります。
さらに、「共同プロジェクト」や「クロスファンクショナルチーム」の導入も効果的です。幹部と現場メンバーがチームを組み、課題解決や新規プロジェクトに取り組むことで、立場の垣根を超えた相互理解が進みます。共に汗をかいた経験が、信頼と尊重の土台を築くのです。
組織体制の変革と環境づくり
現場と経営層の距離を縮めるためには、組織そのもののあり方も見直す必要があります。縦割りや階層構造が強すぎると、情報の流れが滞り、現場の声が埋もれてしまいます。こうした課題に対処するには、「フラットで柔軟な組織体制」を目指すことが大切です。
例えば、役職に関わらず意見を出せる「ボトムアップ型の会議体」を設けたり、情報共有のための「横断的なコミュニケーションチャネル」を整備したりすることで、幹部が現場のリアルな情報にアクセスしやすくなります。心理的安全性が確保された環境があれば、社員も自然と発言するようになり、経営層の視野も広がります。
幹部の意識改革には、「教育・研修プログラム」の充実が欠かせません。単なるマネジメントスキルだけでなく、「現場感覚を養うトレーニング」や「共感的なコミュニケーション能力の向上」を目的とした研修が効果的です。実際の現場を体験したり、現場社員の声をもとにしたケーススタディを用いることで、幹部は自分の視野の狭さに気づき、態度を変えるきっかけを得られます。
また、定期的なフォローアップやメンタリング制度を設け、研修で学んだことを実務に活かすサポートを行うことも重要です。こうした取り組みにより、幹部は現場と向き合う姿勢を身につけ、組織全体にポジティブな影響を与えるリーダーへと成長していくでしょう。
まとめ
幹部が現場を“他人事”と感じてしまう背景には、情報の断絶、意識のズレ、組織文化、そして体制の問題など、複数の要因が絡んでいます。しかし、それは決して変えられないものではありません。定期的な現場訪問、フィードバック体制の整備、共同プロジェクトの実施、フラットな組織づくり、そして幹部教育の強化といった取り組みを通じて、幹部が現場を理解し、当事者意識を持つことは可能です。
経営と現場が一体となって同じ方向を向いたとき、組織は大きな推進力を得ることができます。自社の組織運営を見直すきっかけとして、ぜひ幹部の関与のあり方に目を向けてみてください。現場の声に耳を傾け、そこから経営のヒントを見出す姿勢こそが、持続可能な成長を実現する第一歩なのです。



