「ウェルビーイング」の高い組織とは? 日常だけではなく組織に取り入れるメリットとその方法
「ウェルビーイング」という言葉を最近よく見かけたり聞いたりしませんか? この単語は心身ともに健康で満ち足りた状態を意味します。しかし最終的には会社の利益を向上させる上で、ウェルビーイングこそ大事なものであることが認知されています。
本記事では、組織におけるウェルビーイングの基本概念やその重要性、そして実際にどのようにして組織内でウェルビーイングを実現するかについて詳しく解説します。
特に今は若い世代を中心に「ウェルビーイング」がはたらきやすさの新たな基準となりつつあり、人材確保のために企業も重視すべき概念と考えられています。組織内でウェルビーイングを高めることを難しいと思っている人事担当や経営者の方は多いはずです。我々GCストーリーが提唱する3つの柱を理解することでウェルビーイングの高い組織に推し進めていきましょう。
<目次>
目次[非表示]
組織におけるウェルビーイング基本概念
「ウェルビーイング」とは、心身ともに健康で満ち足りた状態を意味します。実は組織においてもこれは非常に重要です。個々の社員だけでなく、組織全体の健康と活力を指し、例えば生産性や業績向上にも直接的な影響を与えます。米カリフォルニア州立大学リュボミアスキー教授の研究結果によると、ウェルビーイングの高い組織の人間は生産性1.3倍、創造性3倍にまで力を発揮します。
組織内でのウェルビーイングは、病気や怪我がないという状態ではありません。社員一人一人が心地よく働ける環境や、気兼ねなく意見を発する場、主体的に動ける環境が整っていることも含まれます。実際、心理的な安全性や満足感が高い組織ほど、上記のデータの通り社員のパフォーマンスが向上すると言われています。
さらに、ウェルビーイングは組織の文化や価値観にも深く関係しています。たとえば、共通の目標に向かうことが一層強固になったり、自分自身がどれだけ成長すれば貢献できるかなど、社員の意識がポジティブな方向へ変化していくことにつながります。そうして社員ひとりひとりのウェルビーイングが高くなると、ポジティブな文化や強固な価値観を持つことにつながり、長期的な成功にもつながります。
大阪万博のテーマになるほどの「ウェルビーイング」が普及することも理由があります。それはブラック企業の社会問題化もあって、働き方の多様化が進んだことが大きいです。政府は一億総活躍社会の実現を掲げ、2019年から働き方改革関連法の施行を開始したものの、ウェルビーイングという言葉は法律の中には入っていません。
しかし現代の価値観の多様化も進み、先行きが不透明で、将来を予測することが困難な時代VUCAと呼ばれる時代になりました。そして成功する企業はウェルビーイングを大事にしていると次第に広まりました。この時代、働き方の多様化も後押しし、人材流出、流入がより多くなっています。この流れを止めれない事実があるものの、私たちはこの流動性に流されることなく、ウェルビーイングを組織内で高めることで、企業に対する従業員の帰属意識やロイヤリティを高め、社員の定着にも貢献できます。
ウェルビーイングが組織にもたらす利点
組織におけるウェルビーイングの向上は、具体的に多くの利点をもたらします。
1.パフォーマンスが向上するので利益につながりやすい
まず第一に、社員のモチベーションが高まり、それが生産性の向上に直結します。社員が安心して働ける環境が整っていると、新しいアイディアや提案が生まれやすくなり、創造性やイノベーションが活発になるのです。
2.企業の長期的なコスト削減につながる
ストレスの軽減やメンタルヘルスの改善にもウェルビーイングは大きな役割を果たします。ストレスフリーな環境は、病気や離職率の低下を促進し、長期的なメリットを生み出します。離職率が下がることは、人材の維持・育成においても重要で、企業にとってはコスト削減にもつながります。
3.求職者の増加、評判の良さへつながる
ウェルビーイングを意識した組織は、社員満足度が高まるため、求人活動においても有利に働きます。高いウェルビーイングを維持している企業は、求職者にとって魅力的な職場となりやすく、優秀な人材を引きつける力を持っています。
4.自律度が高まり、時間のコストも減る
多くの社長や上司の部下への悩みの中に「指示まち」「自主的に動かない」「挑戦できない」などが挙げられます。これは一概に部下だけのせいではない側面も存在するものではないです。しかしウェルビーイングさえ高まれば、自分には何が必要で、どういった成長が必要かを考えます。自分で考えることができると、受けるべき研修や、取得すべき技術などが判明します。1on1などを行う際にも充実した話し合いができるので、上司などが部下に時間を割くコストも軽減でき、結果的に時間や研修費用などの捻出が節約できます。
組織内ウェルビーイングの実現方法
組織内でウェルビーイングを実現するためには、いくつかの具体的な取り組みが必要です。
健康促進プログラムの導入
まず、健康促進プログラムの導入が挙げられます。定期的な健康診断やフィットネスプログラム、栄養指導などが社員の健康をサポートします。これにより、社員の健康意識が高まり、実際に健康状態が改善されることが期待できます。
職場環境の見直し及び修正
職場環境の改善も重要です。オフィスのレイアウトを見直し、自然光を取り入れる、静かな作業スペースを確保する、リラックスできる休憩スペースを設けるなど、働きやすい環境を整えることが求められます。快適な環境は、業務効率を向上させるだけでなく、社員のストレス軽減にも寄与します。後述しますが、テレワークなどを導入するのも大きな改善となりえます。
社員同士が関わる機会を増やす
社員同士のコミュニケーション促進も欠かせない要素です。チームビルディング活動や定期的なミーティング、社員同士が気軽に意見交換できる場を設けることで、信頼関係が深まります。1on1が効果的となるのもこの理由です。これにより、協力体制が強化され、組織全体が一体感を持って業務に取り組めます。組織文化の共有、目標の最適化にもつながるので必ず行っていきたいことですが、飲みにいくなどを押し付けたりしないようにしましょう。
ウェルビーイングの高い組織につながる3つの柱
ここでは私たちGCストーリーが導き出した、ウェルビーイングの高い組織になる柱を紹介します。
1.存在意義への共感度の高い組織
組織全体の「ミッション・ビジョン・パーパス(目的)」に共感しコミットできているかどうかが第1の柱になります。様々な会社を見渡してみるとビジネスモデルは同じものが多いです。そのため「どうして自分が今の企業で働くか」「どこに誇りを持っているか」が明確になっているかが重要です。ここを鮮明化できていないと、社員の生産性が低かったり、離職率が高かったりします。自分にとって必要なスキルをとって離職してしまうという事態になることが多いです。
そういう意味で、入社前の面談で「どうして同じようなビジネスモデルがある会社が多い中ウチを選んでくれたのか?」と質問することは非常に大事です。しかし、入試した後も、ここを再度認識することも大事になってきます。ここがブレないと、自社に対する帰属意識が高くなり、長くい続けてくれる理由になります。これは社長や上司が押し付けるものではなく、社員自らが感じないといけないことが難しい部分です。
社員が自社に対して「誇り」を持っているかどうか。誇りに思ってもらえるような会社作りを意識したものの、社員に感じてもらわないと、「ここで働くことは誇りだ」と思ってもらえません。だからこそ、「ミッション・ビジョン・パーパス(目的)」を共有し続け、共感してもらえるように工夫しなければなりません。
2.関係性の質の高い組織
こちらは以前のブログ記事で取り上げましたが、「心理的安全性が高い組織」を示します。無知だと思われる不安(Ignorant)、無能だと思われる不安(Incompetent)、邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)、ネガティブだと思われる不安(Negative)などをなるべく最小限にすることが心理的安全性の高い組織につながります。
関係性の質の高い組織は、信頼できる同僚や上司との良好な関係を築くこともできるので、社員の安心感やモチベーションを高めます。日常のコミュニケーションが円滑であることは、仕事の効率にも直結します。定期的なフィードバックや感謝の言葉を交わすことで、ポジティブな関係性を築くことができます。
一方で、関係性の質が低い組織だと、対立やストレスを感じることで、ウェルビーイングを低下させる要因となります。このような場合、早期に問題を解決するためのサポート体制を整えることが重要です。例えば、メンタルヘルス専門のカウンセラーを配置するなど、社員が気軽に相談できる環境を提供することで、問題の早期発見と解決が促進されます。
また、組織文化も大きく影響します。オープンで透明性のある文化を育むことが、信頼関係の構築に繋がります。社員が意見を自由に述べ、互いに尊重し合う環境が整っている組織は、自然と高いウェルビーイングを維持することができます。
▼心理的安全性に関しての記事はこちら▼
3.自律度の高い組織
自律度の高い組織とは、自分の力を使って挑戦できる、自分に自信を持てる組織のことです。組織や上司が保守的で挑戦をさせてくれないという話を我々もよく聞きます。このような組織のあり方が悪影響を及ぼすケースが多いこともありますが、社員自身が自律度向上を妨げるケースにあります。それは社員自身が「他者依存」のままで居続けるケースです。
なぜ自律しにくい人が多いかは成人発達論を基にするとわかりやすいです。実は多くの社員は最初「他者依存」というベースから入社します。他者依存とは、他者に対する強い依存欲求をもち,他者からの承認や支持を過度に求めることです。私たちは学校教育によって、頑張ったら褒められるという認識がある一方で、「他者の求めることをもとに頑張る」ことで「評価」を貰えることが身に染みています。だからこそ、自分自身で考えて動くことよりも、他者の顔色を伺いすぎたり、指示を待つ人が多いです。
「他者依存」から脱却する、つまり自律度の高い社員を育成するのは簡単なことではありません。自己変容しながら、他者の多種多様な価値観を受け入れながらも、自分の意思決定に沿って行動できるようになる。言うは易しですが、ここまで教育するためには、上記の存在意義への共感度の高い組織でありながら、関係性の質の高い組織を作り上げてからが良いでしょう。
いきなり自律度の高い社員を増やすことは難しいです。そのため、なるべく1と2から着手していくことがオススメです。個よりもまずは組織から生まれ変わっていく方が簡単だからです。「相手を変えるよりも自分を変える方が簡単」という言葉があるように、組織さえ変わっていけば、個も自然と変わっていってくれます。
リモートワークとウェルビーイング
近年、リモートワークが普及し、その中でのウェルビーイングの維持・向上が新たな課題となっています。リモートワーク環境でも、適切なコミュニケーションや認識の共有を行うことが必要です。例えば、定期的なオンラインミーティングやチームの進捗報告、個別のフィードバックセッションを設けることで、社員の意識統一が図れます。
さらに、自宅での作業環境を整えるサポートも大切です。デスクやチェア、照明などのオフィス用品を提供することで、快適な作業環境を確保します。また、オンラインでの健康促進プログラムや、メンタルヘルスケアのサポートを実施することで、社員の健康意識を高める取り組みも効果的です。
企業としては、リモートワークにおける孤立感を防ぐための施策も重要です。バーチャルな交流イベントやリラックスできる雑談タイムを設けることで、社員同士のつながりを維持します。これにより、リモートワークでも一体感を持って業務に取り組むことが可能で、組織全体のウェルビーイングが向上します。
ウェルビーイングのまとめ
組織におけるウェルビーイングは、個々の社員だけでなく、組織全体の健康と効率を高めるための重要な要素です。日常的な働きやすさの向上、健康管理、良好な人間関係の維持など、さまざまな取り組みが必要です。特にリモートワーク時代においては、適切なコミュニケーションとサポート体制が欠かせません。これらの要素を組み合わせることで、組織全体がより活力に満ち、結果として高い成果を上げることができるでしょう。
以下は、ウェルビーイングビジネスを定義する8つの原則です。この8項目のうち自社がどこまで意識できているか否かが、ウェルビーイングの高い組織にできているかの鍵となります。
- ビジョンの再定義:自然との調和を保ちながら、社会のニーズに応える
- 透明性の確保:環境、社会、経済のパフォーマンスに関するデータを開示
- 外部性の内部化:環境的及び社会的影響を認識し、負の外部性を減らす
- 長期的なビジョン:会社、社会、自然を含む全ての重要な利害関係者に利益を
- 人を資産にする:社内の声を優先する
- 生産のローカライズ:エネルギー源や財源、流通のローカライズ
- サーキュラーエコノミーへの切り替え:環境および社会システムとの共存
- 多様性を受け入れる:価値観、所有構造、財務の多様性を認識
ここまでを追求することがウェエルビーイングの理想となります。ここまではいきなり考えられないにせよ、アメリカやヨーロッパ、最近ではオーストラリアの企業までウェルビーイングに真剣に取り組んでいます。この多様性の時代だからこそ、しっかりウェルビーイングの高い組織作りをしていきましょう。