イベントレポート 幸せな組織(進化型組織)と8つのトレンド
2024年8月22日(木)に開催された経営者・人事担当向けイベント「幸せな組織(進化型組織)と8つのトレンド」の様子をお届けします。
イベントのフル動画を公開しています。動画で見たい方はこちらから↓
この講座は『 “幸せ”と“成果”を両立する組織づくり』をテーマに、重要なノウハウをお持ちのゲストお招きし、GCストーリー株式会社 常務取締役 萩原典子との対話を通して、未来を切り開くための7つの羅針盤を探求する連続講座の第3回目です。
第4回目のイベントはこちら→https://teaminsight.gc-story.com/seminar/33
今回はスペシャルゲストとして、海外の有名企業100社以上に共通する「楽しく、やりがいのある仕事」と「高いパフォーマンス」を実現する進化型組織のトレンドをまとめた書籍『コーポレート・レベルズ: Make Work More Fun』の監修者であり、株式会社令三社の代表取締役である山田裕嗣氏をお迎えしました。
山田氏は、これまでに日本国内で70以上の進化型組織をインタビューしてきた経験を基に、成果を自然に生み出す組織の在り方について語っていただきました。最初のテーマプレゼンでは「進化型組織の8つのトレンド」を取り上げ、注目を集める最新のトレンドにおける重要な2つの要点と、8つのトレンドへの移行プロセスを紹介しました。
「組織力を最大限発揮するための、実践的な方法はないか?」
「利益が一番大事だが、それ以外も取り組むとなるとそのバランスが難しい」
こうした疑問や悩みをもつ方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次[非表示]
登壇者紹介
山田裕嗣
株式会社令三社 代表取締役
人材育成・組織開発のコンサルティング、大手ITベンチャーのHRを経て、2012年よりBtoB SaaSの株式会社サイカの創業に参画、代表取締役COOを務める。2017年に独立し、上場を目指すベンチャー企業の組織戦略の立案・実行、大企業の人材育成や新規事業の立ち上げ等を支援。2021年10月に株式会社令三社を設立、代表取締役に就任。ティール組織・自己組織化などに関する国内外の有識者との議論や、新しい組織運営を目指す企業のサポートを手掛ける。
『すべては1人から始まる』『コーポレートレベルズ』翻訳・監修。
萩原典子
GCストーリー株式会社 常務取締役
ココシフの運営会社GCストーリーを2005年に実弟と立ち上げ、創業当初から組織のパフォーマンスの最大化と同時に全従業員の幸福にこだわった組織作りを行ってきた。2015年ころからは働きがいのあるランキングやホワイト企業大賞など数々の賞を受賞。
2020年からはココシフブランドを立ち上げ、メンタルトレーナーやコーチとして幸福度や自律度の高い組織作りのサポートを行っている。
100以上の進化型組織に共通する要素とは?
イベント冒頭では、山田氏が『コーポレート・レベルズ』に基づき、進化型組織の重要なポイントを2点に絞って解説してくださいました。
山田氏:「進化型組織のトレンドは7つあるのですが、その中で特に大事な要素を2つにまとめてご紹介します。1つ目は『利益からパーパスへ』という考え方が最も重要であるという点です。パーパスという言葉は今では頻繁に耳にするようになりましたが、2018年の時点で、これを第一のトレンドとして位置づけていたことは非常に革新的でした。他の7つのトレンドが存在する中で、パーパスを先頭に掲げたのは新しい考え方であり、すべてのトレンドがこのパーパスの有無によって、進化型組織の一歩を踏み出せるかどうかが決まります。」
2つ目の要点については、「『ピラミッドからチームのネットワークへ』『中央集権型から分散型へ』『秘密主義から徹底した透明性へ』という3つのトレンドは、ある意味では既に王道として実践されているものでした。これは、コーポレートレベルズアカデミーという世界中から1,500人以上の実践者が参加する有料サブスクアカデミーで私が聞いてきたことや、私自身が日本の70以上の組織にインタビューして得た知見です。」と説明されました。
解説の中で特に印象的だったのは、「パーパスがしっかりしているからこそ、この3つのトレンドが実現できる。逆にパーパスがないと組織はバラバラになってしまう。」という山田氏の強調です。それほどまでに、パーパスの重要性を強く感じさせるものでした。
進化型組織に移行しやすくするコツとは?
山田氏は、成果を出しながら社員がワクワク働く進化型組織には、パーパスが不可欠であると解説しました。しかし、パーパスがあったとしても、他のトレンドにすぐに移行できるわけではありません。特に、多くの組織は「ピラミッド型組織からネットワーク型組織」への移行が難しいと感じています。このトレンドへの具体的な移行プロセスについて詳しく解説してくださいました。
山田氏:「本書では、トレンドに移行するための5段階のステップを紹介しています。例えば、『ピラミッド型組織からネットワーク型組織』への移行についてお話ししましょう。いきなりネットワーク型にすることは難しいので、まずは組織図を反対に描いてみることから始めます。これが第1のプロセスであり、『逆ピラミッド型にしてみる』ということです。トップからの指示ではなく、トップが最も支援する立場になるという思考の転換から始めてみましょう。これが初手として実行可能なプロセスです。
第2段階のプロセスは、『ピラミッド型の自律型チーム』を意識することです。ピラミッド型の構造をいきなり崩さなくても、その中で自律型チームを作ることは可能です。どんなトップダウン型の組織でも、現場では自律的な判断が求められることがあります。例えば、航空自衛隊のように非常に統制されたピラミッド型組織でも、個々の社員が自律的に判断する場面があるのです。こうして組織を徐々にレベルアップさせることで、自律型チームの中からフラットな組織を目指すか、チームのネットワーク化を目指す方向に進み、最終的なプロセスに到達します。」
山田氏は、組織の抜本的な改革を急ぐのではなく、段階的にできることから始めることの重要性を強調しました。こうした徐々に進めるアプローチを取ることで、社員への負担を軽減しながら変革を進めることができます。
利益も大事なはず、でもパーパスを優先すべきなのか
会の中盤では、モデレーターの萩原氏も加わり、「幸せと成果の両立」「ワクワクと成果」などの話題を踏まえ、より具体的な視点を交えて「進化型組織」について議論が展開されました。
萩原氏:「良い組織の共通点とは何でしょうか?私の定義する良い組織は、社員一人ひとりが自律し、活躍できる組織であり、ヒエラルキーや権限移譲が進んでいるところだと思います。」
山田氏:「働いている人の面と組織の面の2つの観点からお話しします。萩原さんのおっしゃる通り、主体的に働ける人が多い組織は非常に成長しており、良い組織といえます。一方、組織づくりの観点から見ると、一貫性が非常に重要だと考えます。たとえば、年輪経営を行う企業では、新卒一括採用を基本とし、給与体系も年功序列に沿っていることが多いです。これも一つの一貫性です。施策が一貫していると、組織の思想にフィットし、社員が自律的に働きやすくなるのだと思います。その結果、コンセプトに合った人材が活躍しやすい環境が整うのです。」
萩原氏:「一貫性は非常に大切だと私も感じています。先ほどの8つのトレンドの解説の中で『利益からパーパス』が重要だとお話しされましたが、おそらくパーパスこそが一貫性を生み出すのではないかと思います。しかし、この『利益からパーパス』という表現の『から』の部分が少し難しく感じます。パーパスが利益よりも優先されるべきということでしょうか?」
山田氏:「経済合理性に偏った意思決定ではなく、進化している企業は経済合理性を重視しつつも、より高次の目的を大事にしているように感じます。本の意図としても、どちらかに偏るわけではありません。経済合理性もパーパスも、両方が重要とされているのです。」
パーパスの作り方はどちらが良いか?
後半からは、ゲストの山田氏が萩原氏にインタビューをする形式となり、以下のようなテーマについて深掘りされました。
- 心理的安全性をいかに高めるべきか
- 心理的安全性の低下を肌感覚でどうして感じることができたのか
- 自律的になるための使う言葉の大切さ
- 組織内でズレが起こった時の対処方法とその体験談
このセッションでは、興味深い体験談や組織文化の形成に関する話題が続きました。その後、参加者からの質問タイムに移り、今日のテーマを締めくくる上で非常に重要な質問が飛び出しました。最後に、その質疑応答をシェアしてこのレポートを締めくくりたいと思います。
参加者:「組織変化はパーパスから始めるべきとありましたが、パーパスは経営者が明示する方が良いのでしょうか?それとも社員と一緒に作る方が良いのでしょうか?」
この質問に対し、山田氏は会社の個性に応じたアプローチを例に挙げて回答しました。
山田氏:「これはどちらのパターンもあり得ると思います。たとえば、ある会社では『絶対にこれを成し遂げたい』という強い目標があることで社員のパワーが一つにまとまる場合もありますし、別の会社では、具体的な目標がなくとも『このスタイルで働くのが楽しい』という感覚を共有できていることが、パワーの源になることもあります。つまり、組織のパワーがどのように形成されるかによって、パーパスの作り方は変わります。
さらに、多くの企業をインタビューしてきた中で、企業の中心にある意図は、大きく分けて『何かを達成したい』、『この会社に所属したい』、『同じ価値観を体現している』の3つが混ざっていると感じました。どれかが突出することで、その会社の個性が決まります。この3つのバランスにより、パーパスを経営者から明示するべきか、社員と共に作るべきかが変わってくるのです。要は、その会社の個性に応じて決まるので、どちらが正解とは一概に言えません。」
本イベントでは、世界20カ国以上、200社の進化型組織を直接訪問し、実践的な知恵を学ぶ1,000人を超える実践者のコミュニティ「Corporate Rebels Academy」の日本コミュニティの立ち上げを手掛けた山田裕嗣氏をお招きしました。山田氏は自身でも70社以上の進化型組織の創業者や経営者にインタビューを行ってきました。
特に、「ピラミッドからチームのネットワークへ」「中央集権型から分散型へ」「秘密主義から徹底した透明性へ」といった進化型組織のトレンドを、自社で実際に実行できているか再確認する貴重な機会となりました。これらの要素が欠けている場合、パーパスが曖昧であったり、組織文化や施策に一貫性がない可能性があります。様々な組織の実例を通じて具体的なイメージを持ち、パーパスや組織の一貫性を見つめ直すことで、組織の長期的な存続に繋げるためのきっかけとなるイベントでした。
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